教習料金の全国的な推移
普通自動車免許を取得する際の料金は、全国的な平均では25万円~35万円と言われています。合宿免許であるならもう少し安くなる傾向もありますね。
この差額は立地的な要因が大きく、郊外よりも都心に位置する教習所ほど高くなる傾向があります。
この価格を妥当だと考える人もいれば高いと感じる人もいると思いますが、これは各世帯の収入によってばらつきがあります。
「なんで教習所ってこんなに高いのかな?」と思われる方は、以下にその理由を記載していきますのでご参考ほどに。
公正取引委員会の存在
公正取引委員会は独占禁止法を運用するために設立された機関です。
この独占禁止法を大雑把に説明すれば、平均の価格水準を定めることで企業間の競争原理を促し、生産と消費のバランスを取るものと考えれば良いと思います。
身近なもので言えば自動販売機の価格設定や、記録媒体(HDDやUSBメモリなど)の容量統一などが挙げられます。
自動販売機のジュースは法外な場合を除き、ほとんど130円で統一されています。これは同じ商品が陳列されている自動販売機が近くにある場合、片方が40円で販売していてもう片方が130円で販売していたのなら、ほとんどの場合40円の安い自動販売機を消費者は選びます。
こうなると競争も何も値段ですべてが決まってしまいますよね。
記録媒体においても上限を定めることによってバランスを保ちます。決められた容量に対して平均価格を設定することで生産と消費のバランスを考えているのです。
容量が多くて安ければ消費者は喜びますが企業は滅びます。逆に価格を高くし過ぎれば、消費者が購入できなくなりお互いが破滅します。つまりは一種の共生関係です。
消費者が「安くするのは企業努力だ!」なんてことを言うのなら、企業は「これを買えるように努力するのが消費者の責務だ!」と言い返しても良いはずです。
このように価格設定には複雑なバランス調整機能が働いており、どこかが崩れてしまうと社会全体に対する安定性が失われてしまいます。
それを防ぐために監視する機関が公正取引委員会です。
教習所の料金設定も公正取引委員会の影響を受けており、どこかの教習所が「うちは10万円で提供します!」なんて謳った場合はすぐに営業停止命令が出ます。
高い金額設定には意味がある
これは考える余地もないほど理由は簡単です。高い方が手が出しにくいからです。
これは日本に限らず資本主義国家なら当たり前のことなのですが、基本的に物事の価値は価格と連動しており、価値が低いほど安く、価値が高いほど高くなります。
駄菓子屋の指輪のおもちゃとティファニーの指輪の価格にミジンコと太陽ほどの差があるのはプラスチックと比べてダイヤに大きな価値があるためです。
運転に関しては物質的な価値はありませんが、一歩間違えれば大惨事を招く可能性が非常に高いため、公道を走る権利を有する免許証に大きな付加価値を持たせているのです。
万が一、何らかの重大な違反や事故によって免許証の取り消しを受けた場合に、教習料金が数万円程度であれば「また取ればいいか」と言った思考になってしまいます。
逆に「また30万円もかかるのか…。」と思われた方が事故に対する抑止力にもなるのです。
それでも教習所の利益は少ない
たまに「教習生ひとりあたり30万だと給料も結構高いんですか?」なんてことを聞かれますが、そんなことあるわけないですよ(笑)
これはまだ仕事をしていない学生さんが多い教習生ならではの意見だと思いますが、上述の通りダイレクトに給料に反映されるわけではありません。
教習所の運営にはそれなりのコストがかかります。設備の維持、車の維持、教材の確保、車検…少なからず維持だけでも年間で1千万円以上のコストはかかりますよ。
そこから残った金額を会社の貯蓄として、さらにそこから絞った金額を給料に割り当てるわけですから給料は一般的なサラリーマンレベルです。
確かにかつては月に100万円稼げる時代がありました。しかしそれはキャンセル待ちで100人以上の教習生がいた時代です。今の時代はキャンセル待ちで10人もいませんよ。
教習所は通常の企業とは異なり、職務は公務で運営は民間という複雑な特性を持っています。
これが逆ならどれだけ良かったことか…。
仕事は法律でバリバリに縛られますが、給料はそこそこと言う非常に厳しい環境です。
ですのでそれ以上の収入が欲しければ工夫をするしかありません。私も自分の得意分野を活かすことで外車を何台か持つくらいの経済力は確保しています。教習所の仕事単体ではなかなか大変なのではないでしょうか。