教習項目13「けん引」

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けん引の基礎知識

けん引の目的と基本的な考え方

けん引、自走できない車両や特別な構造の車両を他の車両で引いて移動させる行為です。災害時や故障時の救援、または特定の業務に必要な輸送など、さまざまな場面で行われます。しかし、通常の運転とは異なりけん引では車両の動きや制動距離が変化し、運転の難易度が上がります。そのため、正しい方法と法律上の制限を理解して行うことが必要です。

けん引に関する法的規制

道路交通法ではけん引できる車両や方法が定められており、運転免許の種類によっても制限があります。たとえば総重量や車両の構造によってはけん引免許が必要になる場合があります(故障車や車両総重量が750キログラム以下の場合は不要)。また、ロープけん引や棒けん引の長さ、速度の上限も法律で規定されています。これらを守らないと事故の危険が増すだけでなく罰則の対象にもなります。

けん引の方法と種類

ロープけん引の特徴と注意点

ロープけん引は比較的短距離で自走不能になった車両を移動する際に用いられます。ロープは適度な強度を持つ素材で、長さはおおむね5メートル以内が望ましいとされています。けん引時にはロープがたるまないように車間距離を保ち、急発進や急停止を避ける必要があります。また、けん引される車両はエンジンが動かない場合、ブレーキやパワーステアリングが使えないため操作が重くなる点も考慮します。

棒けん引の特徴とメリット

棒けん引はロープけん引に比べて安定性が高く、けん引車と被けん引車の間隔が一定に保たれるため急な接近や衝突の危険が減ります。特に重量のある車両や長距離の移動に適しています。ただし、棒の接続には専用の装置が必要で、車両同士の連結部分が確実に固定されていなければなりません。また、走行中は曲がる際の内輪差や棒が地面や障害物に接触しないように注意が必要です。

けん引時の安全確保

制動距離と速度管理

けん引中はけん引車と被けん引車の総重量が増すため制動距離が大幅に延びます。そのため、通常よりも低速で走行し、前方との車間距離を十分に確保することが必要です。また、道路交通法ではけん引時の最高速度を時速25キロと定めています。この制限を守ることでロープや棒の破損、連結部分の緩み、急停止による追突などのリスクを減らすことができます。

合図と連携の重要性

けん引中はけん引車と被けん引車の運転者同士の意思疎通が不可欠です。発進や停止、進路変更の際にはあらかじめ合図を確認し、ジェスチャーなどで連絡を取りながら運転します。また、被けん引車のドライバーはブレーキ操作やハンドル操作でけん引車の動きを補助し、急な揺れや蛇行を防ぎます。お互いの動きが一致していることで安全性が大きく向上します。

特殊なけん引のケース

故障車の高速道路けん引

高速道路では原則としてロープけん引は認められていません。故障車はロードサービスやレッカー車など、専門のけん引車両によって移動させる必要があります。高速道路上で自分たちだけでけん引しようとすると後続車との速度差や短い停止距離の影響で重大事故につながる危険があります。そのため故障時はまず安全な場所に退避し、専門業者を呼ぶことが重要です。

大型車や特殊車両のけん引

大型トラックやバス、重機などの特殊車両をけん引する場合は一般的な免許や装備では対応できません。専用のけん引装置や許可が必要であり、作業には経験豊富な運転者があたります。また、重量や大きさによっては交通規制をかける必要があり警察や道路管理者との調整も欠かせません。こうした作業は計画的に行うことで安全と効率を両立させます。

けん引に必要な装備と点検

ロープや棒の点検方法

けん引に使用するロープや棒は使用前に必ず点検し、摩耗や亀裂がないか確認します。ロープの場合は繊維がほつれていないか、棒の場合は曲がりや変形がないかを見ます。異常があれば使用を中止し、新しいものに交換します。また、けん引フックや連結金具も確実に固定できる状態であることを確認し、走行中の緩みや外れを防ぎます。

灯火や表示の装備

被けん引車は、けん引中も後続車から視認できるように尾灯や反射板を点灯または装着します。夜間や悪天候時には特に重要で、視認性が低下すると追突の危険が高まります。さらに、けん引していることを周囲に知らせるための表示板や旗を取り付ける場合もあります。こうした装備は事前に準備し、けん引作業を安全に進めるための基本です。

まとめ

けん引は一見単純な作業に見えますが法的規制や安全確保のための多くの知識と技術が求められます。ロープや棒けん引にはそれぞれ特徴があり、状況に応じた方法を選ぶことが重要です。また、速度制限や合図、装備の点検など基本的なルールを守ることで事故のリスクを大きく減らせます。特に高速道路や大型車のけん引は高度な注意と専門的な対応が必要です。正しい理解と準備をもって安全かつ確実なけん引を行いましょう。