教習項目1「運転者の心得」

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ドライバーとしてのモラルと責任

車の運転には正しい知識と技術が必要です。例えばハサミやカッターを使い方の分からない幼児が手にしてしまえば危険であることは明白ですよね。恐らくぶんぶんと振り回して自らや他人に怪我を与えてしまうと思います。これらは幼児がハサミやカッターの正しい使い方や知識を知らないがゆえに起きてしまう事故と言えるのです。

車の運転も同様に、一歩取扱いを間違えてしまえば走る凶器となり悲惨な交通事故に繋がってしまいます。なぜ車を運転するためには免許証が必要なのか、なぜ車を運転するためには正しい知識とモラルが必要なのか、これらをしっかりと把握した上で教習に励むようにしましょう。この項目では運転者に必要な心得について解説していきます。

ゆずり合いと思いやり

ゆずり合いは強制ではありませんが、逆にゆずったからといって違反になるわけでもありません(任意)。残念ながら現状の道路整備は完璧ではないため、気配りによってより円滑な交通に繋がる場面が多々あるのです。もちろんすべての場面においてゆずる必要はありませんが、周辺の状況を見ながら余裕をもった行動を心がけるようにしましょう。

妨害運転(あおり運転)の禁止

あおり運転は重大な事故を誘発する極めて悪質かつ愚かな行為です。万が一、妨害運転を受けた場合は車外に出ることなく警察に通報をしましょう。通常であれば運転中の携帯電話などの使用は違反になりますが、この場合は「傷病者の救護又は公共の安全の維持のため当該自動車等の走行中に緊急やむを得ずに行うものを除く」が適用され合法となります。

特にあおり運転の対象となる違反で多いのが「車間不保持」です。場合によっては3年以下の懲役又は50万円以下の罰金、違反点数25点により免許取消し処分に処せられます。さらに著しい交通の危険(高速道路などでの駐車違反など)を生じさせた場合は5年以下の懲役又は100万円以下の罰金、違反点数35点により免許取消し処分に処されます。

過労運転などの禁止

過労とは「通常の睡眠などでは回復しないほどの重度な疲れの状態」であり、この場合は車を運転してはいけません(強制)。一方で睡眠作用のある薬や頭痛薬などを服用した場合はなるべく運転をしないようにしましょう(任意)。つまり過労の場合は運転をすること自体が違反になりますが、薬や頭痛薬などを飲んで運転すること自体は合法です。

強制保険と任意保険

強制保険は2年に1回(新車時のみ3年目)の車検時に「自賠責保険」という形で行政に支払います。ディーラーや整備工場で車検を行っている場合は特に意識をしなくても自動的に支払いが行われているはずなので(ユーザー車検等を除く)、そもそも強制保険に入っているという認識すらない人も少なくありません。


強制保険加入のイメージ


一方で任意保険は自動車の所有者が自分の意思で加入する必要があります。強制保険のように半自動的に入るわけではないので、自動車を購入したら真っ先に調べておいたほうが良いでしょう。当然「任意」なので加入は強制ではありませんが、強制保険の内容がポンコツなので任意保険への加入を強く推奨します。

ここでは強制保険と任意保険の2種類の保険のシステムがあることさえ把握しておけば大丈夫なので、詳細は学科教習(第二段階)の教習項目15「自動車の所有者などの心得と保険制度」にて記載をしています。

酒気帯び運転の禁止

車の世界において「酒」関係はすべて禁止です。自分自身は当然ですが、これから運転をする他人に対しても酒をすすめてはいけません。これらの行為に対して、例え当事者ではなくても厳しい措置が取られます。飲酒は正常な運転を阻害し、一歩間違えれば本人だけでなく他人をも悲劇に巻き込む事故に繋がります。


本人の場合

  • 酒酔い運転(懲役5年以下、または100万以下の罰金
  • 酒気帯び運転運転(懲役3年以下、または50万以下の罰金)

酒を飲んでいる人に車両などを提供した場合

  • 酒酔い運転(懲役5年以下、または100万以下の罰金
  • 酒気帯び運転運転(懲役3年以下、または50万以下の罰金)

酒類を提供または同乗した場合

  • 酒酔い運転(懲役3年以下、または50万以下の罰金
  • 酒気帯び運転運転(懲役2年以下、または30万以下の罰金)

道路交通法の目的

道路交通法には以下の目的があります。

  1. 道路における危険の防止
  2. 道路における交通の安全
  3. 道路における交通の円滑
  4. 道路交通によって起きる障害の防止

そもそも法律は人々が自由に安心して暮らすことを目的とし、様々な時代背景や試行錯誤を繰り返しながら発展を続けてきた制度です。法律の重要さは法律が機能をしていない国に目を向ければ分かると思います。ルールと聞くと堅苦しくて窮屈なイメージを持ちがちですが、ルールがなければ安心して外も歩けません。

道路交通法に関しても人々が安全に、そしてなるべく損をしないように先人たちが時間をかけて作り出してきたものです。道路交通上におけるほとんどの事故はこれらの法律を無視、或いは軽視したことによって生じるものであり、破った場合は「自己責任」では済まされないほどの現実を突きつけられることになります。

運転に適した服装

四輪車の場合は運転に支障のない服装を選ぶようにしましょう。げたやハイヒールなどを履いて運転をしてはいけません。教習所の技能教習においてもげたやハイヒール、クロックスなどを履いて受講しようとするとリアルに受付拒否されます(公安委員会により定められた規則なので全国の教習所で同一です)。

二輪車の場合は身体の露出がなるべく少なくなるような服装をし、できる限りプロテクターを着用するようにして下さい(同乗者も同様)。バイクに精通している人ほど完全武装に近い服装をしています。乗車用ヘルメットの着用は義務であり、本人だけではなく同乗者にも着用させる必要があります。

シートベルトの効果と義務

シートベルトの着用が義務であることはほとんどの人が認知しているかと思いますが、その効果については単純に「安全のため」という認識のみで他の効果については知らない人も少なくありません。確かにシートベルトの着用は安全上欠かせないものではありますが、他の効果についても知っておく必要があります。


シートベルトの効果

  • 交通事故にあった場合の大幅な被害軽減
  • 運転姿勢を正しく保てる
  • 疲労を軽減させる

特にシートベルトの「疲労を軽減させる効果」については学科試験でも出題される傾向があるので覚えておくようにしましょう。シートベルトは運転者自身はもちろんですが、助手席や後部座席の同乗者にも着用させる義務があります。つまり同乗者がシートベルトを着用していない場合は運転者の責任になるのです。

同乗者のせいで運転者に責任が生じるのは少々理不尽な気もするのですが、これは同乗者が免許証を取得していない場合も想定してこのような決まりになっています。ようするに「免許証を取得していない=ルールを知らない」のであれば、道路交通法を学んでいる運転者がルールを伝えるべきという発想です。

例えばタクシーに乗っている利用客全員が免許証を取得しているわけではありません。当然シートベルトのルールを知らない人もいるはずです。この場合はルールを知っているタクシーの運転手がシートベルトの着用をさせる義務が発生し、これを怠った場合はタクシーの運転手に違反点数1点が科せられます。

病気などの為にシートベルトの着用が困難な場合は、例外的にシートベルトの着用が免除される場合があります。ちなみに妊娠は病気ではないため、妊娠中も正しくシートベルトを着用する必要があります。このあたりは医師の診断書があればシートベルト着用の有無を判断しやすいです。

走行中の携帯電話の制限

走行中は携帯電話、スマートホンによる通話はもちろんメールの使用、LINEの確認などもすべて違反行為になります。割と勘違いしやすいのですが、通話やメールの送受信などを行わなくても「手に持っているだけで使用扱い」になるので注意して下さい。しかしながらこれらは「必ず」ではなく例外もあります。

上記の通り走行中の携帯電話の使用は禁止されていますが、道路交通法の第71条5の5には「傷病者の救護又は公共の安全の維持のため当該自動車等の走行中に緊急やむを得ずに行うものを除く。」との記載があります。悪質なあおり運転はこれにあたるため、走行中にスマートホンなどで通報しても違反にはなりません。

この項目の特徴

ここでは試験に対する基礎的な流れを掴むことが大切です。特に「させなければならない(強制)」と「させた方がよい(任意)」の違いを理解しておく必要があります。また、なるべく早い時点で「未満」と「以下」の違いを把握しておくと今後の教習において非常に役立つでしょう。

練習問題

  1. ゆずりあいや思いやりの気持ちを持つことは道路交通上のトラブル防止や安全運転に繋がる。
  2. 幼児を自動車に乗せるときはチャイルドシートを使用させたほうが良い。
  3. 周囲に誰もいないことを確認し、車内のゴミを窓から捨てた。
  4. 任意保険のほうが重要なので、強制保険を解約して任意保険に加入しなおした。
  5. 酒には強いほうなので、少量であれば飲んで運転しても問題ない。
  6. 運転する際はアクセルペダルやブレーキペダルをしっかりと踏み込みやすい運動靴などが適している。
  7. 後部座席に友人がシートベルトを着用せずに同乗していたが、注意をすると気まずくなるので黙っておくことにした。
  8. シートベルトの着用は衝突時の被害軽減だけではなく、運転姿勢を正しくさせたり疲労を軽減する効果がある。
  9. 走行中にほんの一瞬だけスマホの操作をした。
  10. あおり運転の被害を受けていたため、走行中に携帯電話で警察に通報をした。

解答

  1. ○…設問の通り。
  2. ✕…チャイルドシートは任意ではなく義務(強制)なので「使用させたほうが良い」ではなく「使用させなければいけない」が正解です。
  3. ✕…軽犯罪法違反なのでゴミなどのポイ捨ては禁止です。
  4. ×…強制保険は文字通り強制なので自動車を所有する際は必ず加入しなければなりません。
  5. ×…例え少量であっても酒を飲んで運転してはいけません。
  6. 〇…設問の通り。
  7. ×…運転者は同乗者にもシートベルトを着用させる義務があります。
  8. 〇…設問の通り。
  9. ×…走行中の携帯電話の制限は時間で計測するものではないので、ほんの一瞬の操作であっても道路交通法違反の対象となります。
  10. 〇…設問の通り。