教習項目1「運転者の心得」

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ドライバーとしてのモラルと責任を学ぶ

第一段階で必ず最初に受ける講義です。ここでは運転をする上でのマナーや心構え、技量や知識の大切さについて学んでいきます。第一段階から第二段階に至るまでの多くの範囲を記載しており、各項目における目次的な要素を含む内容になっています。学科試験においても比較的出題されやすい重要な項目です。

重点学習ポイント

  • ゆずりあいと思いやり
  • 他人に迷惑をかけない運転
  • チャイルドシートの効果と義務(幼児の意味)
  • 強制保険と任意保険
  • 酒気帯び運転の禁止
  • 道路交通法の目的
  • 運転に適した服装(靴やヘルメット含む)
  • シートベルトの効果と義務
  • 走行中の携帯電話の制限

ゆずりあいと思いやり

道路交通法上では事故防止の観点から道路における優先関係を明確にしています。そのため必ずしも不用意にゆずる必要はないのですが、状況によっては交通をより円滑にするためにゆずったほうが良い場面も少なからずあるのです。ゆずらないからといって違反にはなりませんが、ゆずったことによる違反もありません。

例えばガソリンスタンドの出口から出庫しようとしている車がいたとします。この場合は優先関係上ガソリンスタンド側の車をゆずる必要はありませんし、出口を塞いだとしても「駐車場、車庫などの自動車用の出入口から3メートル以内の場所は駐車禁止」であるため、駐車に該当しない停車であれば実は問題がないのです。


ガソリンスタンドの出入口は駐車禁止であって停車禁止ではない


ゆずったほうが道路交通が円滑になる場合がある


しかしながら前方が混んでいて流れが悪かったり、出ようとしている車の進路を塞いでしまうと、例え道路交通法で定められていなくても全体としての流れは悪くなってしまいます。このあたりはエスカレーターのゆずりあいと同様に、法律で定められていなくても自然と円滑に物事を進められるような行動が必要です。

基本的に「思いやり」をもった行動は相手方にも善意として受け入れられることが多いので、ゆずることによって感謝はされても嫌な気持ちをぶつけられることはありません。全体の状況を見てゆずるべき場面、そうでない場面をしっかりと見極めることができればあなたも熟練したドライバーへの仲間入りです。

他人に迷惑をかけない運転

社会の中で生活をしていく以上、他人への配慮は不可欠になります。「自分さえ良ければ…」「これくらいはいいだろう」といった行動は他人から見れば迷惑です。道路に空き缶やタバコの吸い殻を投げ捨てたりすると、軽犯罪法違反に触れて30日未満の勾留、または1万円未満の金銭徴収に課せられる可能性があります。

ちなみに軽犯罪法違反で起訴され、有罪が確定した場合は一生消えることのない前科がつきます。実際の裁判で無罪判決を確保することは難しいため、何気ない行動が実は犯罪であることを自覚しておいたほうが良いでしょう。

チャイルドシートの効果と義務

そもそもチャイルドシートの役割は「座高調整機能」です。通常シートベルトは大人の体型を元に設計を行っているため、身長の低い幼児に使用すると正しい位置でベルトを使用することができません。そのため幼児を自動車に乗せるときは発育の程度に応じた形状のチャイルドシートを使用させなければなりません。

ここでポイントとなるのは「させなければなりません」という表現であり、これは任意ではなく強制を指す言葉なので、幼児にチャイルドシートを使用させないと幼児用補助装置使用義務違反により交通違反点数1点が科せられます。ここでいう幼児とは6歳未満、つまり6歳の誕生日を迎えるまでは使用義務が発生します。

強制保険と任意保険

強制保険は2年に1回(新車時のみ3年目)の車検時に「自賠責保険」という形で行政に支払います。ディーラーや整備工場で車検を行っている場合は特に意識をしなくても自動的に支払いが行われているはずなので(ユーザー車検等を除く)、そもそも強制保険に入っているという認識すらない人も少なくありません。


強制保険加入のイメージ


一方で任意保険は自動車の所有者が自分の意思で加入する必要があります。強制保険のように半自動的に入るわけではないので、自動車を購入したら真っ先に調べておいたほうが良いでしょう。当然「任意」なので加入は強制ではありませんが、強制保険の内容がポンコツなので任意保険への加入を強く推奨します。

ここでは強制保険と任意保険の2種類の保険のシステムがあることさえ把握しておけば大丈夫なので、詳細は学科教習(第二段階)の教習項目15「自動車の所有者などの心得と保険制度」にて記載をしています。

酒気帯び運転の禁止

車の世界において「酒」関係はすべて禁止です。自分自身は当然ですが、これから運転をする他人に対しても酒をすすめてはいけません。これらの行為に対して、例え当事者ではなくても厳しい措置が取られます。飲酒は正常な運転を阻害し、一歩間違えれば本人だけでなく他人をも悲劇に巻き込む事故に繋がります。


本人の場合

  • 酒酔い運転(懲役5年以下、または100万以下の罰金
  • 酒気帯び運転運転(懲役3年以下、または50万以下の罰金)

酒を飲んでいる人に車両などを提供した場合

  • 酒酔い運転(懲役5年以下、または100万以下の罰金
  • 酒気帯び運転運転(懲役3年以下、または50万以下の罰金)

酒類を提供または同乗した場合

  • 酒酔い運転(懲役3年以下、または50万以下の罰金
  • 酒気帯び運転運転(懲役2年以下、または30万以下の罰金)

道路交通法の目的

道路交通法には以下の目的があります。

  1. 道路における危険の防止
  2. 道路における交通の安全
  3. 道路における交通の円滑
  4. 道路交通によって起きる障害の防止

そもそも法律は人々が自由に安心して暮らすことを目的とし、様々な時代背景や試行錯誤を繰り返しながら発展を続けてきた制度です。法律の重要さは法律が機能をしていない国に目を向ければ分かると思います。ルールと聞くと堅苦しくて窮屈なイメージを持ちがちですが、ルールがなければ安心して外も歩けません。

道路交通法に関しても人々が安全に、そしてなるべく損をしないように先人たちが時間をかけて作り出してきたものです。道路交通上におけるほとんどの事故はこれらの法律を無視、或いは軽視したことによって生じるものであり、破った場合は「自己責任」では済まされないほどの現実を突きつけられることになります。

運転に適した服装

四輪車の場合は運転に支障のない服装を選ぶようにしましょう。げたやハイヒールなどを履いて運転をしてはいけません。教習所の技能教習においてもげたやハイヒール、クロックスなどを履いて受講しようとするとリアルに受付拒否されます(公安委員会により定められた規則なので全国の教習所で同一です)。

二輪車の場合は身体の露出がなるべく少なくなるような服装をし、できる限りプロテクターを着用するようにして下さい(同乗者も同様)。バイクに精通している人ほど完全武装に近い服装をしています。乗車用ヘルメットの着用は義務であり、本人だけではなく同乗者にも着用させる必要があります。

シートベルトの効果と義務

シートベルトの着用が義務であることはほとんどの人が認知しているかと思いますが、その効果については単純に「安全のため」という認識のみで他の効果については知らない人も少なくありません。確かにシートベルトの着用は安全上欠かせないものではありますが、他の効果についても知っておく必要があります。


シートベルトの効果

  • 交通事故にあった場合の大幅な被害軽減
  • 運転姿勢を正しく保てる
  • 疲労を軽減させる

特にシートベルトの「疲労を軽減させる効果」については学科試験でも出題される傾向があるので覚えておくようにしましょう。シートベルトは運転者自身はもちろんですが、助手席や後部座席の同乗者にも着用させる義務があります。つまり同乗者がシートベルトを着用していない場合は運転者の責任になるのです。

同乗者のせいで運転者に責任が生じるのは少々理不尽な気もするのですが、これは同乗者が免許証を取得していない場合も想定してこのような決まりになっています。ようするに「免許証を取得していない=ルールを知らない」のであれば、道路交通法を学んでいる運転者がルールを伝えるべきという発想です。

例えばタクシーに乗っている利用客全員が免許証を取得しているわけではありません。当然シートベルトのルールを知らない人もいるはずです。この場合はルールを知っているタクシーの運転手がシートベルトの着用をさせる義務が発生し、これを怠った場合はタクシーの運転手に違反点数1点が科せられます。

病気などの為にシートベルトの着用が困難な場合は、例外的にシートベルトの着用が免除される場合があります。ちなみに妊娠は病気ではないため、妊娠中も正しくシートベルトを着用する必要があります。このあたりは医師の診断書があればシートベルト着用の有無を判断しやすいです。

走行中の携帯電話の制限

走行中は携帯電話、スマートホンによる通話はもちろんメールの使用、LINEの確認などもすべて違反行為になります。割と勘違いしやすいのですが、通話やメールの送受信などを行わなくても「手に持っているだけで使用扱い」になるので注意して下さい。しかしながらこれらは「必ず」ではなく例外もあります。

上記の通り走行中の携帯電話の使用は禁止されていますが、道路交通法の第71条5の5には「傷病者の救護又は公共の安全の維持のため当該自動車等の走行中に緊急やむを得ずに行うものを除く。」との記載があります。悪質なあおり運転はこれにあたるため、走行中にスマートホンなどで通報しても違反にはなりません。

この項目の特徴

ここでは試験に対する基礎的な流れを掴むことが大切です。特に「させなければならない(強制)」と「させた方がよい(任意)」の違いを理解しておく必要があります。また、なるべく早い時点で「未満」と「以下」の違いを把握しておくと今後の教習において非常に役立つでしょう。

練習問題

  1. ゆずりあいや思いやりの気持ちを持つことは道路交通上のトラブル防止や安全運転に繋がる。
  2. 幼児を自動車に乗せるときはチャイルドシートを使用させたほうが良い。
  3. 周囲に誰もいないことを確認し、車内のゴミを窓から捨てた。
  4. 任意保険のほうが重要なので、強制保険を解約して任意保険に加入しなおした。
  5. 酒には強いほうなので、少量であれば飲んで運転しても問題ない。
  6. 運転する際はアクセルペダルやブレーキペダルをしっかりと踏み込みやすい運動靴などが適している。
  7. 後部座席に友人がシートベルトを着用せずに同乗していたが、注意をすると気まずくなるので黙っておくことにした。
  8. シートベルトの着用は衝突時の被害軽減だけではなく、運転姿勢を正しくさせたり疲労を軽減する効果がある。
  9. 走行中にほんの一瞬だけスマホの操作をした。
  10. あおり運転の被害を受けていたため、走行中に携帯電話で警察に通報をした。

解答

  1. ○…設問の通り。
  2. ✕…チャイルドシートは任意ではなく義務(強制)なので「使用させたほうが良い」ではなく「使用させなければいけない」が正解です。
  3. ✕…軽犯罪法違反なのでゴミなどのポイ捨ては禁止です。
  4. ×…強制保険は文字通り強制なので自動車を所有する際は必ず加入しなければなりません。
  5. ×…例え少量であっても酒を飲んで運転してはいけません。
  6. 〇…設問の通り。
  7. ×…運転者は同乗者にもシートベルトを着用させる義務があります。
  8. 〇…設問の通り。
  9. ×…走行中の携帯電話の制限は時間で計測するものではないので、ほんの一瞬の操作であっても道路交通法違反の対象となります。
  10. 〇…設問の通り。