今の時代はほとんど使いません
結論から言うと仕事や趣味、欲しい車がMTの設定しかない(一部欧州車)等、余程の理由がない限りMTを選択する理由はほとんどないでしょう。「MTはATよりも前方を気をつける必要があるから安全である」といった話も実は統計上のデータに基づいたものではありません。MTでも前方不注意による事故は発生しています。
アクセルとブレーキの踏み間違いによってコンビニに突っ込んでしまうような事故もMTならエンストが生じて防げるかもしれませんが、今ではAT車にも誤発進防止機能が搭載されているのでMTならではのメリットというわけではなくなりました。そもそも踏み間違いは機械ではなく人為的なミスです。
どうしてもMTを取りたい理由があるのなら仕方がありませんが、ただ「なんとなく」であるとか「男はMT」とかいう古臭い考え方でMTを選ぶことは推奨致しません。日本の場合は自分の経験を押し付けようとする悪しき習慣があるので、周囲がやたらMTを推してくる場面があっても気にしないで下さい。
MTは就職で有利になるのか?
なりません。
かつては求人項目に「MT免許要」の記載が多く見られましたが近年ではあからさまに減少しています。これはAT限定免許所持者が増えてきた影響で、MT免許所持者を募集事項に加えると誰も求人に来てくれなくなってしまうからです。企業が取ってきて欲しいと伝えても「じゃあ他に行きます」と逆に断られてしまいます。
むしろ今の時代はバスもトラックもAT車の割合が多くなってきているので、それでも就職先でMTが必要だと言われた場合は「この会社はAT車に買い替えるだけの財力がないのでは?」と疑うべきです。さすがにMT車を扱う自動車教習車や、MT車を運転する機会のある整備士あたりは別ですが基本はMTである理由がありません。
MTはどのような人に向いているのか?
ずばりMTを取得する目的が明確な人です。「仕事で使う」「趣味で使う」「車が好き」等、その動機が本人にとってプラスであるならMT免許を取得するべきだと思います。自分でギアを操作する感覚が労働ではなく娯楽として捉えられるのならMT免許は人生においてきっと輝くはずです。
一方で人に言われるがままMTを選択してしまった教習生の8割が後悔を感じています。ほとんどの場合は「親に取れと言われた」という理不尽な動機ばかりです。「仕事で使うからMTにしたほうがいい」という意見は30年前なら通用するかもしれませんが今は21世紀です。ソ連も今はロシアですよ。
何か意見を伝える場合は事前にしっかりと最新の情報を集めて分析を行い、その上で相手を説得できるだけの内容をまとめてから「MTのほうがいいよ」と言うのなら分かります。ただその手順を踏まないで過去の自分の経験と勘だけで相手に意見を押し付けるのはパワハラに近いです。
MT免許は必要のない人にとっては本当に必要のない免許であり、小学生時代に取れる漢検と同じくらいのイメージです。人類の文明社会では「いかに生活を楽にするか」を追求して発展してきた経緯があり、洗濯機や冷蔵庫も人の生活から労力をなくすために生まれた人類の知恵の集まりなのです。
人類の歴史に当てはめるのなら労力しか生じないMTの衰退はほぼ必然と言えるでしょう。しかしながらその労力を楽しめる人…例えば洗濯をする際に洗濯機ではなくて洗濯板を使いたいとか、カメラはデジタルではなくフィルムを使いたいとか、あえてアナログな手法を好む人もいるので趣味の世界では残るかもしれません。
ようは誰かの意見に振り回されるのではなく、自分自身で決めたほうが最終的に後悔の生じにくい選択肢になるのだと思います。