テレワーク、リモートに続くオンライン化の流れ
2020年11月13日午前、学科教習のオンライン化に向けた調整について小此木国家公安委員長が会見を行いました。通常自動車教習所にて行う学科教習は座学として26時限受ける必要があるのですが、これをオンライン方式として自宅にて可能とする流れです。
近年ではコロナウイルス感染症対策の一貫として、テレワークやリモート講義といったような企業、大学間における取り組みが増えてきている風潮にあると言えます。確かに自宅で学科教習を受けることが出来れば楽な気もするのですが実際はどうなのでしょうか?
そもそも教習生の負担が減るのかどうかは別問題として、学科教習のオンライン化には様々な障壁を越える必要があります。
学科教習のオンライン化は可能なのか?
これには一般的な大学の講義とは異なる法律的な縛りが影響します。例えば道路交通法における教習は「50分」と定められており、これより1分早い49分の教習であっても欠略として不成立になります。つまり50分は必ず教習を行わせる必要があるのです。
教習中になぜ寝てはいけないのか?それは寝ている時間は教習に当たらないからです。1分寝ていたらその1分を延長して確実に50分を確保しなければなりません。大学の講義であれば多少寝てても注意で済むかもしれませんが、教習所は法律です!従わなければ運営できなくなります。
つまり学科教習をオンライン化するに当たっては教習生本人がしっかりと50分受講しているのかを把握する必要があります。教習所で行うのであれば目の前でうたた寝している人やスマホを操作している人に対して注意ができますが、オンラインでは教習生がカメラの先なので確認が困難です。
恐らくですけどオンライン化と同時に不正も発生すると思います。本人が受講させているように錯覚させるツールなんかも登場するでしょう。人間は面倒くさいことをさけるためには驚くほどの行動力を見せます。加えて言うなら手間もほとんど改善されません。
この制度の名目上では「オンライン化によって教習原簿への押印の手間が省ける」「今まで専有されていた学科教習の部屋を開放して別の用途に使うことができる」等、確かに教習所サイドから見れば事務作業の簡略化、効率化という意味においてメリットがあるかもしれません。
それに対して教習生側はどうでしょう?
学科教習を自宅で行える以外のメリットが見当たりません。どちらにせよ技能教習は教習所に通わなければ成立しないので、技能教習のついでに学科教習を受けて分からないことは直接指導員に聞いた方が効率的な気がしませんか?
つまりこのオンライン化は教習所側の手間を省くためにある制度であって、教習生側へのメリットはかなり希薄なんです。そもそも技能教習に通う時点で人が集まる教習所には出向くわけですから、コロナウイルス感染症対策になるかと問われれば「う〜ん…」って感じが正直なところ。
ショッピングモールに人が来るなって言ったって来るんです!買い物や食事も生活の一部ですから。同様に免許だって生活の一部です。ですから完全に人と人との接触を断つことはできません。もちろんソーシャルディスタンスに代表される対策はこれでもか!ってほどやってますけど。
てか一番対策しなければいけないのは年間を通して難民キャンプのような密を実現させる免許センターなのでは?(笑)
オンライン化におけるメリット
- 学科教習を自宅で受けられる
- 上記理由により教習所への滞在時間が減る
- 配信サービスや録画を利用すれば再度受講できる
- 技能教習を受けない日に教習所に通う必要がない
- 使わない教室を何らかに応用できる
- 押印の廃止や教習原簿の回収廃止に伴う事務作業の簡略化
オンライン化によるデメリット例
- 50分受講するという手間は変わらない
- 指導員に質問ができない(マンツーマン方式は現実的ではない為)
- 上記理由により内容理解度低下への懸念
- 周辺環境を揃える負担(仕送り不足などで人によっては経済的負担が大きい)
- 流れが分からないと先に進めなくなる
- 絶対的にやる気がおきない!それが人間!
オンライン化における今後の流れ
学科教習のオンライン化については政府機関が公式に発表しているものなのでいずれは実現しているかと思います。河野内閣府特命担当大臣も日本の無駄な「押印社会」を打破しようと試みていますから、公安委員会的にもこの流れを汲むのだと思います。
最終的には技能教習、仮免学科試験、各種検定については物理的な問題で教習所で行うことに変わりないと思われますが、学科教習のオンライン化は比較的早い時期に導入されるかもしれません。だってリモート講義ができるんですから技術的には揃っていますよね、制度的な問題であって。
今後はこの法律的な制度をどうするのか?不正対策は万全を講じられるのか?デメリットがメリットを上回っていないか?
など、考えなくてはならないことがたくさんあります。とりわけオンラインであれば学科教習受講料の大幅な見直しも必要になるはずです。この場合学科教習受講料は目を瞑るのか、それとも技能教習料金に上乗せするのか、教習所ごとに対応が異なると色々と問題が起きますよね。
どちらにせよこのオンライン化が実現するまでに私が現役を貫いているのかは分かりませんが、教習所、教習生双方にとって不利益にならないような調整を講じて頂きたいものだと願うばかりです。こればかりは政府のお仕事なので…。