1959年から現代に続く3点式シートベルト
3点式シートベルトを簡潔にまとめると、世界で最も普及しているベルトの固定方式のことです。以下の画像の通り3点で支えているのでこう呼ばれます。
3点式シートベルト
古い車では以下のような2点式も存在しますが、衝突時に上半身が大きく揺さぶられてしまうため現代ではあまり使われていません。
2点式シートベルト
ちなみにレーシングカーの世界では4点式もあります。
4点式シートベルト
こちらはグリップ力こそ上ですが、構造が複雑なのでコストが高く、またシートベルトにはあってはならない故障を伴う危険性もあります。定期的に細かくメンテナンスを行うことが出来るレースマシン(F1やWRCの競技でよく見られる方式)にこそ真価を発揮するベルトですね。
3点式のメリットは
- 簡単な構造
- 安価
- 乗員保護性能能が高い
ことです。実はこの方式は、1959年に自動車メーカーのボルボ(スウェーデン)が発明して以来、半世紀以上に渡って基本構造に変化が起きていません。60年ほど前に開発された技術でありながら、当時からすでに完成されたデザイン(機能)ってわけですね。
当然ながらボルボはこの技術について特許を取得しますが、このあとすぐに取得した特許を世界中の自動車メーカーに無償公開してしまいます。
えっ?
って感じですよね(笑)
3億円の報償金がかかったツチノコを捕まえておきながら「こんなのいらないや、ポイ!」ってするようなものですよ。まぁそのおかげで現在の自動車メーカーのほとんどにボルボが開発した3点式が採用されているのですが、それではボルボが損をしてしまいますよね。
では、なぜボルボはせっかく手にした革命レベルの特許技術を無償公開することにしたのでしょうか?その答えはボルボという自動車メーカーの本質を調べれば少しずつ見えてきます。
利益よりも信念を貫いたボルボ
前述の通り、現在ではほとんどの車で3点式が採用されていますから、当然特許を取っていれば特許使用料だけでも莫大な利益を得ることが出来るはずです。それが特許の強み!しかしボルボはその特許を無償公開しました。つまり特許によって生じるはずだった利益を全て放棄したのです。
その理由についてボルボ側は
- 自動車の安全性能は世界共通の目標であり独占すべきではない。
と述べています。つまり自社の利益よりも自動車メーカーとしての責務と信念を優先し、その結果として特許技術の無償公開に至ったのです。特許を取得した理由はせっかく構築した安全技術を下手に改悪して世に出回らせないようにする意図があったと言われています。(技術の保全)
確かに特許として登録しておけば第三者が捏造品を作って販売することを防ぐことが出来ますし、そもそも完成した技術を無償公開しているわけですからそれを断る理由がありませんよね。ボルボの英断があったからこそ今でも多くの人々の命が守られていることを忘れてはいけないでしょう。