坂道発進はなぜ行うのか
教習所に通っていれば比較的早い段階でこの坂道発進を練習すると思います。(試験合格に必要な必須項目)
内容は読んで字のごとく、坂道で一度停止してから発進するだけなのですが、けっこう勘違いしたやり方で発進してしまう人も多いです。
教習所の方法では坂道で停車した際にサイドブレーキをかけるのですが、日常的な運転風景の中でこうしたサイドブレーキをかける機会をあまり見たことがないと思います。
(今ではプリウスのようにサイドブレーキが足下についている車が多いです。これを足踏み式パーキングブレーキと呼びますが、用途はサイドブレーキと一緒です。)
それではなぜ教習所ではサイドブレーキを使って発進するのでしょうか?
基本的な坂道発進の手順を以下にまとめてみましょう。
坂道発進の手順
AT車の坂道発進
- 上り坂の途中で止まり、サイドブレーキをかける。
- ブレーキを離す。この際、後方に下がらないことを確認。
- 軽くアクセルを踏んだままサイドブレーキを離す。
この際アクセルを強引に踏んで進むのではなく、軽く踏むことがポイントです。
MT車の坂道発進
- 上り坂の途中で止まり、サイドブレーキをかける。
- ギアはローギアへ。
- ブレーキを離す。この際、後方に下がらないことを確認。
- アクセルを軽く踏み、一定回転数を保つ。
- クラッチを少しづつ離し、回転数が少し減り、音の変化があったところで維持。
- ハンドブレーキを離す。(クラッチが少し繋がっているので後方に下がらない)
- アクセルを軽く踏み、クラッチを徐々に上げていく。
これだけでもMT車における操作の面倒臭さが分かりますね。
勘違いしている方も多いのですが、サイドブレーキをかける目的は後方に下がらない為であり、前方に進む為ではありません。
サイドブレーキをかけたまま、アクセルを強く踏みすぎてズルズルと動いてしまう方もいますが、本来は動かない程度に軽くアクセルを踏み続けるだけでいいのです。
とは言っても、動かない程度のアクセル加減って本当に難しいんですよね。このあたりはAT車よりもMT車の方が制御しやすいかもしれません。
意外と多い日常的な急勾配
教習所の坂道は急なところで約12%ほどあります。10%でも6度くらいの角度になるので、かなり急な部類です。
よく私はこの角度を富士山5合目くらいと表現していますが、実は富士山に行かなくてもこれくらいの角度の坂道はあちらこちらに存在します。
特に買い物が好きな方にとっては無視できない内容かもしれません。
その急な坂道の存在する場所…それはショッピングセンターやショッピングモールなどの立体駐車場におけるスロープです。
そもそも立体駐車場は、少ない面積でも縦に階層を重ねることで収用台数を確保している特徴があります。
これは敷地面積の狭い都市部に多く見られる傾向であり、土地の余った地域においては立体ではなく平面駐車場が主流です。
この立体駐車場の特性上、なるべく階層を増やして収用台数を多くしたいという都合があるので、必然的にスロープは急角度になってしまうのです。
これくらいの急角度になってしまうと、さすがのAT車においてもブレーキをしっかりと踏まないと徐々に後退を始めてしまいます。
そして後方に下がっていることに気がつかずに後ろの車にガシャン!
こんな事故が毎日、日本のどこかで起きているんですよ。このような事故を防ぐために使える有効な手段がハンドブレーキなのです。
近年ではヒルスタートアシスト機能(上り坂でブレーキを離しても数秒間はブレーキが作動する)が搭載されている車種も増えてきていますが、あくまで数秒間ですから過信は禁物です。