キックダウンとは

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キックダウンの仕組み

キックダウンとはそのまま英訳すると「キック(蹴る)」+「ダウン(おろす)」になります。つまり蹴り下ろすという意味ですが、これを足元に置き換えるとアクセルを「踏み込む」という意味になります。AT車では無意識に使う機会も多いのですが、近年主流であるCVT車にはこの現象が発生しません。

AT車やMT車にはギアという歯車が異なるサイズでいくつか配置されています。5速ATなら5個の歯車が…6速MTなら6個の歯車が並んでいるイメージです。これらを速度に応じて切り替えることで燃費の向上やスムーズな加速に繋げています。例えるならギア付き自転車の切替スイッチが自動化しているのがAT車です。

AT車とMT車の大きな違いは「ギアを自分で選択するか」と「クラッチの有無」です。2ペダル式MT(BMWのDCTやFIATのデュアロジック等)はAT限定免許でも運転出来ますが分類上はMTになります。任意のタイミングでギアを選択するMT車とは異なり、AT車では機械が自動で選択をするので自由にギアを選ぶことが出来ません。

とりわけ急加速が必要な場面(高速道路の合流等)においてはギアを1段下げたほうが加速しやすくなる傾向があるのですが、AT車ではギアを任意で選べないためにそれらに代替するシステムが必要になります。これが今回の主題となるキックダウンであり、急加速を行う際には必要不可欠な機能の1つです。

使い方は非常にシンプルでアクセルを一気に踏み込むだけです。アクセルを踏み込むとキックダウンが発生し(セカンドギア以降)ギアが1段下がります。実際にはコンピュータが「加速が必要」と判断するのに0.5~1秒くらいのラグがあるため、体感上は一瞬遅れてから急加速が始まることが多いです。

当然ギアが1段下がるということは自転車のギアチェンジと同様にガチャンというショックが発生します。このショックのことを「変速ショック」と言います。近年の車はこうした変速ショックを抑える工夫がされているので、よりシームレスに(キックダウンに気が付かないほど)キックダウンが発生するのです。

特に排気量の少ない軽自動車等ではこのラグが大きいと言われています。ちなみにキックダウンは機構そのもの、或いは現象自体を指すため「キックダウンが搭載されている」「キックダウンを起こす」のどちらの使い方も誤りではありません。知らずに発生してパニックにならないように事前知識として覚えておきましょう。

キックダウンの起きない車種

キックダウンはAT車特有の現象ですが、同じATの区分に入るCVT車(無段変速装置)は例外です。CVTは構造上ATのようなギアが複数あるわけではなく、プーリーの大きさを変えることで出力の調整を行います。イメージ的にはギアそのものがないのでAT車で見られるようなキックダウンが存在しません。

近年流行りの電気自動車も動力伝達がモーターのみになるのでギアが存在しません。あくまで自動的にギアが下がる現象をキックダウンと称するため、手動で切り替えるMTにもキックダウンの概念はありません。最近の教習車はAT車だけはなくCVT車も多く見られるため、運転する車における構造の違いを意識してみましょう。