急ブレーキとABSの意味

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緊急回避に必要となりうる急ブレーキ

正式には急制動と言います。通常のブレーキングとは異なり、飛び出しや緊急回避を伴う際に一気にブレーキを踏み込む動作のことを差します。

当然急ブレーキですから速度が速いほど衝撃力も大きくなり、30キロくらいの速度でもひとたび急ブレーキを踏めばたちまちタイヤからキキーッ!と音がなるほどです。

実際の道路環境下でこの音を聞いた際は、その後高確率でガシャーーーン!ときます。

おそらく事故につながる原因の発見が遅れたために、急ブレーキを踏んでも間に合わなかったのでしょう。

理想で言うなら急ブレーキ自体を発生させる要因を起こさないことが大切なのですが、事故とは予期せぬ事態で遭遇するものなので、使い方を知らないとさらに事故を大きくしてしまう可能性があります。

今回の記事は急ブレーキに対する正しい知識と、それを補助するABSの役割を説明していきたいと思います。

急ブレーキの危険性

自転車に乗っている方なら分かると思いますが、急な下り坂でそこそこの速度が出ている時、前輪ブレーキを一気に握ってしまうとタイヤが固まってしまい転倒してしまいますよね?

これをロック現象(教科書では単にロック)と言います。タイヤがロック(固まる)してしまうことが由来です。

実は自動車の世界にもこうしたロック現象が発生し、勢いよくブレーキを踏んでしまうと安定感を失いスピンしてしまう恐れがあります。

これをある程度防ぐ目的で後述のABSの話につながるのですが、制御を失いやすいという点ではABS搭載車であっても非常に危険な行為なのです。

もしみなさんが運転をしている立場で、路地から急に自転車が飛び出してきたらどのように対処するのでしょうか?

まずは自転車にぶつからないように急ブレーキを行うでしょう。そして何とか自転車を避けようとどちらかにハンドルを動かすと思います。

動かした先はどうでしょう?

左側にほかの歩行者がいないか確かめる余裕があるでしょうか?

そして右側によけたとしても対向車の存在を無視してはいけません。それに後方からバイクが自分の車を追い越そうとしていたら激突ですよね。

これでも最低限の要素ですが、これを飛び出した自転車が自分の車に到達する0.5~2秒ほどのあいだで行わなければならないのです。

これらはそもそも速度を落として慎重に運転していれば生じていなかった危険であるとも言えます。

日頃から急ブレーキを踏まなくて済むような運転構えが大事なのです。

ABS(アンチロックブレーキシステム)

たまに教習生に「ABSって何だか分かりますか?」と言った問いかけをしています。

するとなぜか高確率で「アンチブレーキシステムです!」という回答がきます。まぁニュアンスは合っているのですが、それだと「止まってはいけない制動装置」になってしまいますよね(笑)

正式にはロックさせない(アンチロック)制動装置という意味です。

特に急制動の項目を行う2段階であれば、すでに1段階で学んでいるはずの内容ですので事前に予習をしておきましょう。指導員はやってきた内容については覚えていることが前提で聞いてきます。

ABSは現行車種であればほとんど搭載されているメジャーな装置ですが、そもそもどのような働きで安全運転をサポートしてくれるのでしょう。

ABSのメカニズム

あまり専門的なことは含めずに簡単な言葉でお伝えします。ずばりABSとは急ブレーキを踏んだ際にコンピューターが自動的に感知して、ブレーキを「高速で踏んだり離したり」している装置なのです。

タイヤがロックしないように(固まらないように)ブレーキを作動、非作動を繰り返しているわけですから、はたから見ればタイヤが回転している状態でブレーキがかかっているように見えます。

もし自転車にABSが搭載されているならば、急な下り坂でブレーキを握りしめてもタイヤの回転は保たれるので前方につんのめる事がありません。

人間ではできないくらい高速で踏んだり離したりをしているのでペダルからそれに伴う振動が発生します。

これをキックバックといいます。ABSがしっかり作動してくれている証拠ですので、驚かずにそのまま踏み込んでおきましょう。

ハンドルによる回避運動もできますので、最後まで諦めずに危機回避運動を行って下さい。

勘違いしないためのABS

勘違いしやすいのですが、ABSは非搭載車よりも制動距離(止まれる距離)が短くなるわけではありません。

ブレーキを踏んだり離したりしているのですから、単純な制動距離であるなら離さない方が止まりやすいのです。その代わりロックして制御不能になりますけどね。

ABSの役割はあくまで安定して止まることです。ちなみにABSが世界で初めて採用されたのは、意外にも空を飛ぶ飛行機だったんですよ。